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5G 第5世代移動通信システム 最新情報 東京オリンピック 5G実証実験 5GNR

2019年07月10日 10時52分55秒 | 5G


5G・第5世代移動通信
東京2020五輪大会に向けて実現へ




総務省、「5G」の周波数帯を楽天など携帯4社に割り当て
 総務省は4月10日、第5世代移動通信システム(5G)の周波数帯を、NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てることを発表した。
 3.7GHz帯については、KDDI/沖縄セルラー電話が2枠、NTTドコモとソフトバンク、楽天モバイルが1枠、4.5GHz帯についてはNTTドコモに1枠が割り当てられた。28GHz帯については、4事業者が1枠づつ確保した。
 この結果、NTTドコモとKDDI/沖縄セルラー電話は、建物や樹木などの障害物に対しても電波が伝わり、しかも高速・大容量の情報伝達が可能という電波特性があることで使いやすい帯域」とされる3.7GHz帯/4.5GHz帯でそれぞれ2枠づつが割り当てられ、5Gサービス競争でソフトバンク、楽天モバイルに比べて優位に立った。
 5Gサービスの料金体系については各事業者とも明らかにしていないが、現行の4Gと変わらない見通しとされている。携帯電話4社の激しい競争が始まる。

 また、問題になっている華為技術(ファーウェイ)製品については、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は、5G通信インフラ設備に華為技術など中国製の機器を採用しない方針だ。米国の呼びかけを受けた中国製品を事実上排除する政府の申し合わせに配慮した形となった。
 各社は希望する周波数を総務省に申請する際に、基地局などの機器をどの会社から調達するかについて計画を記載していた。同省は詳細を明らかにしなかったが、関係者が朝日新聞の取材に当面は中国製品を採用しない意向だと答えた。(朝日新聞 4月11日)
 しかし、華為技術の5G製品は技術面で国際的に高い評価を得ているとともに、価格面では圧倒的に優位に立っている。
 携帯事業者4社は政府の意向を尊重して華為技術を排除したが、5Gネットワーク整備に影響が出ることは避けられない。


「5G」周波数割り当て NTTドコモとKDDI/沖縄セルラー電話が優位に

5G周波数割り当ての審査方針総務省公表 地方を重視 通信事業者の重荷に



ファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO) カナダで逮捕 イラン制裁違反の疑い
 12月5日、中国の情報通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が、米国の要請を受けたカナダの捜査当局にバンクーバー空港で逮捕された。
 米司法省は、孟氏が米国による対イラン制裁をくぐり抜けようと、米金融機関にうその説明をした詐欺の疑いがあると主張。孟氏の身柄の引き渡しを求めている。
 これに対して中国外務省報道官は、「理由を示さないままの拘束は人権違反で、直ちに釈放するように求める」と強く批判した。
 米トランプ政権は安全保障上の理由で、ファーウェイや中興通訊(ZTE)を標的に制裁措置を重ねてきた。有力幹部の逮捕に至ったことで、米中の摩擦は更に激化することが懸念される。

 今回の逮捕の背景にあるのは、米中の第五世代移動通信、5Gを巡る覇権争いにあるとされている。
 華為は5G開発で最先端を走る企業の一つで、世界170カ国・地域の通信事業に進出している。
 トランプ政権は、中国企業が関与するスパイ活動が米国の安全保障を脅かすとし、中興通訊(ZTE)とともに米国市場から事実上、締め出してきた。
 ZTEは4月にイラン制裁違反を理由に制裁を受けて経営危機に陥り、経営陣を刷新して7月に制裁を解除された。米国は日本を含む同盟国に安全保障上のリスクがあるとして華為製品を使わないよう求め、豪州やニュージーランドは5G通信網に華為の参入を認めないとし、英国BTも基幹ネットワークから排除するとしている。またドイツテレコムやフランスのオレンジ社も調達の見直しを表明した。 
 これに対して日本も、華為技術と中興通訊の製品を政府調達から事実上、排除する方針を固めた。2社が中国情報機関との結び付きを指摘されていることを踏まえ、各府省庁のサイバー攻撃対策担当者による会議を開き確認する。ただし日中関係にも配慮して2社を名指しせず、申し合わせの内容は「安全保障上の観点を考慮する」といった表現にとどめる方向だ。(共同通信 12月7日)
 華為の技術力は米国の警戒対象で、華為はスマートフォンや通信基地局で強いブランド力を持つ。17年の売上高は6036億元(約9.9兆円)。スマホの世界シェアは米国のアップルを抜いて世界第2位、5G設備の構築では各国に攻勢をかけていて、世界各社を一歩リードしているされている


米国、孟晩舟CFO起訴 身柄の引き渡しを要求 90日間の米中貿易交渉を絡めて強硬策に出た米国 国内経済の減速で打撃を受け幕引きを画策する米国と中国


5Gのプレサービス 2019年夏にも開始 総務省が公開ヒアリング
 総務省は2018年10月3日、5G(第5世代移動通信システム)に関する公開ヒアリングを開き、楽天モバイルネットワークを含めた携帯電話事業者4社が5Gの事業展開や利用イメージなどをプレゼンした。日本では2020年の東京オリンピック・パラリンピックが始まる前までに5Gの商用化を目指しており、2019年夏にもプレサービスが始まる見通しだ。
 NTTドコモは「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」が開催される2019年9月に合わせて、「都市部から地方まで、5Gの需要のあるところから、「プレサービス」を始める計画を明らかにした。
 プレサービスのイメージについては、「料金は徴収しない。端末は私どもから貸出するが、その台数は限られる」と説明した。
 本格的な商用サービスの開始は2020年春としている。



 KDDI は2019年、一部エリアから5Gを開始し、高繊細映像配信、スタジアムソリューション、、ドローン警備などを開始する計画だ。本格展開を始めるのは2020年で、「4Gとの連携による本格展開」とし、大容量のモバイル・サービス、リモート・オフイス、遠隔操作などで実用化するとしている。そして、「2021年には5Gコアを導入し、ネットワークスライシングやMEC(Multi-access Edge Computing)を活用した様々なサービスを提供していくとした。
 さらに5Gの意義の1つとして「地域課題解決と地方創生」を挙げ、そのエリア展開について「首都圏だけではなく、多くの地域に整備する」と地方へのサービス展開に力を入れるとした。

 ソフトバンクも5Gのプレサービスを2019年に始める計画で、スタジアムの臨場感を360度のVR(仮想現実)で視聴体験できる5Gイベントを2019年夏以降に開催するとしている。本格サービスが開始される2020年には、多数接続を可能にするIoT(NR)でインフラの監視や超低遅延を生かした自動車や建設機械の遠隔操作サービスを実現したいとしている。

 2019年10月に携帯電話事業に参入する楽天は、移動体通信のターゲットを、インターネットサービス、フィンテック(金融)、そして通信事業の、3つの事業を上げている。
 楽天では、基地局の開設を前倒して、4Gネットワークの構築を実施する計画で、展開エリアは東名阪を中心に、2019年10月のサービス開始での自社エリアは、東京23区、名古屋市、大阪市が中心になるとしている。その後は全国の都市圏、周辺エリアに拡大していく。自社エリア以外はローミングでカバーし、通信は全国で利用できるようにする。
 楽天では、4Gネットワークの構築するにあたって、5Gの仮想化アーキテクチャーを先取りした“5G Ready”システムで構築しているため、無線ユニットの追加とネットワークのソフトウエアのアップグレードだけで4Gから5Gへの素早い移行が実現可能としている。移行に際しては、アンテナなど末端の設備は5Gで新たにハードウェアを用意する必要はあるが、その基地局の選定は、すでに5Gサービスを前提に作業を進めている。
 こうしたネットワーク構成を採用した楽天は「2020年から5Gサービスを開始したい」と表明。獲得を希望する周波数幅(28GHz帯で800MHz幅など)が実現すれば、下り10Gbpsのサービスを提供できるとした。
 またEコマースなどで、ラストワンマイルの配送を無人のロボットカーが行う研究も行っているとし、5Gと連携させたいとしている。
 楽天は、2019年10月開始予定の4Gサービスの料金について、サービス開始の「数カ月前」に発表する予定としているが、楽天の参入で携帯電話事業の競争は激化するだろう。

 公開ヒアリングは、携帯電話事業者の4社が一堂に集まったが、5Gの利活用の紹介では、建設機械の遠隔操作や遠隔地医療、スマート農業、スマート工場、スマート・シティなど実証実験でトライヤルしたものばかりで、新たな利活用の展開イメージは示されず、新鮮味に欠けた。なぜ5Gサービスが必要なのか、現在、主流になり始めている4G(LTE-Advanced)では十分でではないのか、依然として説得力に欠いている。またユーザーにとっては最も関心のある5Gサービスの料金設定についても、なるべく安価にしたいと曖昧な表現に留まり、明らかにされなかった。

 携帯電話事業者の他に、5G移動通信システムの導入に名乗りを上げている事業者が22社ある。
 その多くがケーブルテレビ事業者で、ケーブルテレビ富山、秋田ケーブルテレビ、イッツコム、阪神ケーブルエンジニアリング、愛媛CATV、中海テレビ放送など14社と日本ケーブルテレビ連盟である。その他にパナソニックシステムソリューションやBWAジャパン、地域ワイヤレスジャパン、CCJなど7社の通信サービス事業者が名乗りを上げていて、5Gの周波数割り当ては難航すると思われる。
 総務省は、5Gサービスを開始する事業者に対しての周波数割り当てを2018年度末に実施するとしている。


出典 総務省 5G利用に関する調査結果の概要

携帯料金値下げ競争激化 5Gの設備投資に重荷に
 2018年11月10日、政府の規制改革推進会議は、携帯電話料金の引き下げへ向けて、通信料金と端末代金の完全な分離や、販売代理店の販売・広告に対する規律の整備、一定期間の支払総額を明示、MNO事業者との競争を阻む“差別”解消対策として、期間拘束契約や自動更新、解約時の違約金などを改めさせる措置を政府に求める答申をまとめた。政府は具体策を年度内にまとめるとしている。 
 携帯料金をめぐっては、菅義偉官房長官が今年8月に「他の国に比べて高すぎる。4割程度下げる余地がある」などと発言し、値下げ議論が加速した。
 こうした動きに対し、通信事業者側は「携帯料金が著しく高いとは思っていない」、「価格もあるが、サービスの質が問題。トータルで判断することが大事」などと反論しているが、菅氏は5Gのプレサービスが始まる来年10月には「大幅値下げ」を実現させる見通しを示した。
 これに対して、NTTドコモは、10月31日、携帯料金を2019年6月までに、2割~4割程度、値下げするし、最大4000億円(年間)を利用客に還元すると発表した。そして5Gインフラ構築のために1兆円(2019年~2023年)投資するとした。
 一方、KDDIは楽天との大型提携発表し、通信回線を楽天に貸すことを明らかにした。楽天は参入当初から全国でサービスが可能になった。回線貸し出しは2026年3月末まで、楽天は通信網の整備を進め、順次自前の回線に切り替えていく。両社はこのほか決済や物流分野でも提携を進めるとした。値下げについては同様のプランはすでに実施しているが更なる値下げを検討するとしている。またソフトバンクは、すでに分離プランの導入で2〜3割値下げしているが、モバイル通信部門の人員を4割削減して携帯料金の更なる値下げを目指すとしている。
 来年開始の5Gサービスの料金体系について各社とも明らかにしていないが、こうした値下げ競争激化がどう影響するのかが注目される。
 通信事業者は、すでに3GからLTE、そしてLTE Advancedを実現するために膨大な設備投資を行っている。3.5GHz帯の活用や、キャリアアグリゲーション(CA)、256QAM、MIMO技術の導入で、588~788Mbpsの高速LTEサービスを実現し、各社とも約50%のカバーエリアを達成している。LTEの高度化への設備投資はまだ継続している中で投資額の回収までには至っていないと思われる。さらに5Gへの投資や料金値下げが重荷になり通信事業者は生き残りを賭けた競争に突入した。5Gサービスの商用化展開は前途多難だ。

韓国 5G周波数オークションで携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定



4K8K映像、高速走行移動体、トラック隊列走行、スタジアム映像サービス、遠隔地医療 
5G実証試験の成果を報告

 2018年3月27日と28日、総務省は「5G国際シンポジウム2018」を開催し、2017年度に実施した、「5G総合実証試験」の成果の報告し、5Gの技術開発情報やさまざまな分野での利活用の事例を海外の5G開発関係者に発信した。
 「5G総合実証試験」は、総務省とNTT、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信事業者や国際電気通信基礎技術研究所、情報通信研究機構が参加し、超高速・大容量通信、高速移動体(電車・自動車)の通信、低遅延通信、同時多数接続などをテーマに実施した。


5G国際シンポジウム2018


5G総合実証試験の成果の展示

 NTTドコモ は、「PCやタブレットやスマホなどのユーザー端末で5Gbps、1基地局あたり10Gbps超の超高速通信の実現」をターゲットにして、東京スカイツリータウンと和歌山県で、4.5GHz帯および28GHz帯を使用した5G実証実験に取り組んだ。
東京スカイツリータウンには、「5Gトライヤルサイト」が設置され、4K/360度VR映像や8K映像をライブで伝送し、5Gの技術評価をした。またこのトライヤルサイトでは、「人口密集地」の屋外環境において最大10.2Gbps通信速度を実現した。
 和歌山県では、都市部の総合病院と山間部の診療所を高速通信ネットワークで結び、4K高精細映像を活用した遠隔診療サービスの実証試験を実施した。医師が診断する際に患者の患部を映し出す4K接写カメラ映像や超音波映像診断装置(エコー)・MRIなどの医療機器の映像をリアルタイムに伝送することで、遠隔診療サービスの高度化に効果が上げられるとした。

 NTTは、「高速移動時における2Gbpsの高速通信の実現」をサービス・モデルに、28GHz帯を使用し、電車・高速バスなどを想定した時速90キロで移動する高速移動体に対し4K高精細映像を5G通信で伝送する実証実験を実施した。
 富士スピードウェイ(静岡県)では、時速90キロで走行する自動車に対する伝送試験ではで最大2.24Gbpsを達成、東武鉄道日光線(栃木県)では、時速90キロで走行する電車に対する伝送試験では最大2.90Gbpsを達成した。
 2020年実現を目指している自動運転走行車には超高速・低遅延の5G通信のバックボーンは不可欠とされている。

 KDDIと国際電気通信基礎技術研究所は、2018年3月、沖縄・那覇市内にある「沖縄セルラースタジアム那覇」で、28GHz帯を使用した5G通信を利用して、4K映像のリアルタイム映像を観客席に設置した50台のタブレット端末に対して配信する実験を実施した。
KDDIは、東京・台場のシンポジウム会場でも同様のシステムのデモンストレーションを行い、25台のタブレット端末にそれぞれ異なる4K映像を同時配信した。
 スポーツの試合や音楽コンサートなどのイベントで、観客のタブレットやスマートフォンに、多地点に設置されたカメラで撮影した選手やアーティストの高精細映像をリアルタイムで配信し、観客が自由に視点を選んでイベントを楽しむサービス・モデルを想定している。平昌冬季五輪でもフィギアスケートなどで、POV(Point of view)サービスとしてすでに実現され、東京オリンピックでも同様のサービスが行われるのは確実だろう。
実証実験で使用されたタブレット端末はサムスン電子製で、同社製の5Gモデムを内蔵しており、最大で約3Gbpsの高速通信が可能とされている。
 平昌冬季五輪は、サムスンは5G対応タブレット端末の試作機約1000台を提供したが、今回KDDIが公開した端末はそれと同等機種だという。5G対応のタブレット端末が日本で公開されるのはこれが初めてで、しかもサムスン電子製。
 5Gタブレットの開発では、日本は韓国に後れをとった。


KDDIの5Gタブレットの展示


『Sharing our Future』技術解説 NTTdocomo

 ソフトバンクは、「トラックの隊列走行 車両の遠隔監視・遠隔操作」をサービス・モデルにして、「1ms(無線区間)での低遅延通信の実現」の実証実験を行った。
 時速50kmから90kmで走行中のトラックと5G実験基地局間で、4.7GHz帯を使用し5G通信の実験を実施し、無線区間(片道)の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信に成功した。
 トラックの隊列走行実験では、後続車両に搭載されたカメラで撮影した4K映像を、28GHz帯を使用した5G車両間通信により先頭車両にリアルタイムで伝送する実験も行った。
 車両間だけでなく。基地局を経由した4.7GHz帯を使用して、4K映像のリアルタイム伝送実験も行った。
先頭車両のモニターで、低遅延で鮮明な4K映像を見ることができたとし、トラックやバスなどの遠隔監視や遠隔制御などでの利活用が期待される。
 今後は5G移動通信の「超高速」、「大容量」、「低遅延」のメリットを活かし、トラックの隊列走行で、先頭車両だけに運転手を配置して後続車両を無人自動運転にするなどの利活用モデルの実用化に向けて検証や評価を行なっていきたいとしている。
 実証実験を統括して5GMFの三瓶技術委員長は、「実証実験の初年度としては成果を上げたと思う。2020年、5G商用化を実現するためには、2018年度が重要な年となる」と総括した。

5Gの必要性の根拠を示せなかった実証実験
 今回の実証実験の各グループの発表を聞いて、筆者は、なぜ5Gが必要なのか、4GLTEで十分なのではないか、大きな疑問が沸いてきた。
 東京スカーイツリーの「5Gトライヤルサイト」では、4K8K映像の送信、スタジアムでのタブレットに向けての4K配信、トラック隊列走行でも4K映像のやりとり、遠隔地医療システム、5Gの実証実験というと必ず「4K8Kの高繊細映像」の伝送が登場する。
 5Gは移動通信サービスであり、5Gのユーザーは、タブレットやスマートフォンなどの移動体の端末で、大画面ではなく小さな画面で映像や画像を見るというサービス・モデルである。タブレットやスマートフォンの小画面で、HDと4Kの映像を見比べても、画面に顔を近づけてよく見ない限り優位差は感じられない。HDと4Kの画質の優位差が顕著に表れるのは50インチ以上の液晶テレビである。さらに8Kとなるとその威力はパブリック・ビューイングの大スクリーンにならないと発揮できない。
 なぜ、HD映像では不足なのか、なぜ4Kにしなければならないのか、理解に苦しむ。タブレットやスマートフォンのユーザーはHD以上の高画質を求めているのだろうか。
 スタジアムのイベントでのスマートフォンへの映像配信やトラックの隊列走行の管理映像、テレビ会議には4Kは果たして必要なのだろうか。
 HD映像でサービスを実施するなら4KLTEで十分で、膨大な新たな設備投資経費が必要な5Gは不要だ。
 遠隔地医療での利活用では4Kの高繊細映像のリアルタイム伝送が威力を発揮するということは理解できる。しかし、なぜ光ファーバーを利用しないのか。日本のほぼ100%の地域には光ファーバー網の設置が終わっている。伝送路の実証実験をするより、遠隔地医療サービスのシステム構築に力を注ぐ方が重要だろう。 
 「1ms以下」の低遅延についても、タブレットやスマートフォンのユーザー対してはほとんど意味がない。多少の遅延が生じても映像や画像を見るにはまったく支障はないだろう。
 その一方でIot時代の急速な進展で、ヒトを介さないモノ同士の通信量は、今後急速拡大すると予想されている。Iotを駆使した“スマートハウス”の実現なども想定される。またAIロボットやAI自動車は大容量のビックデータを処理しなければならなくなる。こうしたICT時代には5Gネットワークの基盤整備は必須となる。今回の実証実験で、5Gサービス実現で最重要となるIotデバイスの多数同時接続に向けた実証実験がないのは不満感が残る。
 5Gの実証実験は、4G(LTE-Advanced)では実現不可能で5Gを使用しなければならい利活用サービス・モデルを提示する必要がある。それができなければ、なぜ5Gが必要なのかについて国民の理解は得られないだろう。


出典 総務省

“2020年5G商用化の実現”に暗雲 5Gはオーバースペック
 5Gサービスの商用化を実現するためには、4G(LTE-Advanced)では不可能な新たな魅力的な利活用のサービス・モデルを提示できるかどうかにかかっている。
 今の日本で移動体通信の大半を使用しているは1億台を超えるとスマートフォンのユーザーである。
 しかし、こうしたユーザーの大半は4G(LTE-Advanced)で十分満足していて、これ以上の高スペックで高価な5Gに関心は示さないと思われる。
 幅広い市民への5Gの普及拡大は、ほぼ絶望的だという懸念が生じる。
 日本の一般の家庭や企業に対しては、光ファーバー回線がほぼ100%整備されていて、いつでも高速通信サービスが利用可能だ。光ファーバー回線が十分に普及していない米国やアジア各国では、5Gネットワークは大きな意味があるかもしれないが、光ファーバー網が整備されている日本では5Gサービスはあまり意味がない。国民の支持も得られないだろう。 
 さらに5Gに割り当てられる周波数帯域も重要である。
 今回の「5G総合実証実験」では、4.5Mbps帯域と28Mbps帯域が割り当てられた。4.5Mbps帯域を利用すると、雨や霧、建物や構造物などの障害物があっても電波はある程度回り込んで伝わり、広範囲に行き渡りるが伝送速度は上がらない。また使用可能な帯域幅も狭く、大容量の通信を行うには条件は良くない。これに対して28Mbps帯域では、伝送速度は上がるが、電波の直進性が強く、障害物があると減衰し、電波は広範囲に及ばない。使用可能な帯域幅は幅広く確保することが可能なので大容量の通信にはむいている。それぞれ一長一短なのである。
 こうした周波数の特性をクリヤーするには、膨大な数のアクセスポイントをどう設置するか、新しいネットワークシステムや5G対応機器の開発をどうすすめていくかが肝要で、5Gサービスの実現には相当なハードルが待ち構えている。5G設備投資の負担と収益性のはざまで通信企業各社は解決しなければならない難問が課せられている。

 国を挙げて取り組んでいる2020年5Gサービスの商用化、5Gのユニバーサル・サービスの実現には暗雲が立ち込めている。
 残された時間は後2年、5Gまさに正念場を迎えている。



NTTドコモの5G無線装置 13.2Gbpsの通信速度を実現している


5G総合実証試験  出典 総務省報道資料 2017年5月16日


5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP
 2017年12月21日、「3GPP TSG RAN Plenary」は、5G NR標準仕様の初版の策定が完了し、技術仕様を公表した。
 今回策定されたのは、5G NRをLTEと連携させて実現するNSA(Non-StandAlone)と呼ばれる機能を規定した。既存の4G(LTE)ネットワーク構成の中に5GNAネットワークのエリア(EPC Evolved Packet Core)を構築して、ユーザーデータは4G(LTE)と5GNAを連携させ処理し、通信制御は4G(LTE)側のコントロールチャンネルで処理する。NSA(Non-Standalone)と呼ぶ5GNRネットワーク構成を規定した。
 新たな無線方式の5GNRを、高度化した4G(LTE)と連携させて一体的に動作させることで5Gサービスを実現させた。
 これを受けて、同日、世界の主要5G移動通信キャリヤー各社は、早ければ2019年に開始を予定している5Gサービスの大規模トライアルや商用展開に向けて、5G NRの開発を本格的に開始すると共同発表を行った。
 3GPPは、これで5G標準化の「フェーズⅠ」の策定を終えて、引き続きSA(tandalone)方式の策定に入り、2018年6月には「フェーズⅡ」を策定し、「5G New Radio」の標準化を完了するとしている。
 日本では情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会技術検討作業班が、これまでNB-IoTやLTE-Mの技術条件の検討などを進めてきたが、12月22日に開かれた第4回会合から、「5G New Radio」を受けて、5Gの技術条件の検討を本格化させた。
 同作業班は今年5月に取りまとめる報告書をもとに、夏頃までに技術的条件を策定し、これに基づいて総務省は、焦点の5G向けの新周波数を2018年度末までに割り当てる方針である。
 2018年は、2020年の5G商用サービス実現に向けて重要な年となる。





出典 新時代モバイル通信システム委員会技術検討作業班資料


5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP


平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か?




第五世代移動通信5Gとは何か



第5世代移動通信システム国際ワークショップ2015 2015年11月6日 幕張メッセ
ITU、日米欧中韓の推進組織の代表が集まった *米国はビデオ参加

 「G」という言葉の意味は、英語の「Generation(世代)」の頭文字。1Gは第1世代、2Gは第2世代、3Gは第3世代、4Gは第4世代、そして次世代の通信規格、5Gは、第5世代となる。
 1Gはアナログ方式の通信規格、2Gはデジタル方式になってメールやネットの利用に対応した規格。さらに高速化された3Gでは動画サービスが開始され、iPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレットが本格的に登場し、“モバイル時代”の幕開け、そして、さらに高機能化したiPhone5やNexus 5などのモバイル端末の爆発的普及を支えた4G、そして、すでに、その次世代の5Gが“胎動”している。
 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界に先駆けて、現在の1000倍、10Gbps 以上の通信速度という第5世代移動通信システム (5G)の実現をめざし、 “オールジャパン”での取組みが強力に推進されている。


出典 2020年代に向けたワイヤレス関連の戦略 総務省


出典 情報通信技術分科会


出典 一般社団法人電波産業会[ARIB]

急増するトラヒック(通信量) 進化した移動通信システム
 iPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレッットの爆発的な普及で、移動通信へのトラヒック(通信量)は、急増している。2014年3月には671.7Gbps(月間平均 総務省調査)という膨大なトラフィックが記録されている。移動通信へのトラヒック(通信量)は、この5年で、10倍、これからの5年でさらに10倍、この5年で10倍、2020年までには1000倍になると言われている。
 2011年から2012年にかけて立て続けに起こった通信障害は記憶に新しい。急増したiPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレッットの通信量を処理できず、“つながらない”をというトラブルが日本全国で多発した。膨大な数の移動端末が、ネットワークに“つなぎっぱなし”になることが原因だったという。
 また新しいサービスモデルの登場も、トラヒック(通信量)の急増を加速させる。
 最近、注目を浴びているウエアブル端末、2015年4月、Apple Watchが発売されて、ブームは一気に加速している。2020年には、1億台以上普及するという予想もあり、今後、爆発的に普及しそうである。ウエアブル端末とは、身につけて持ち歩くことができる情報端末、時計や眼鏡などの製品に利用される。
 もう一つは、「モノとモノつなぐ通信」である。
 M2M(Machine to Machine)と呼ばれる人間が介在しないで、機器同士がコミュニケーションをして動作するシステムである。またIoT” (Internet of Things)は、「モノのインターネット」と呼ばれ、社会のあらゆる"モノ"が通信でつながるシステムだ。
 こうした「モノとモノつなぐ通信」が、交通、医療、企業、公共施設、学校、家庭など社会のあらゆる分野で急速に普及している。
 こうした通信量の増大に対応するためには、移動通信の超高速化と利用周波数帯の拡大を早急に実現しなければならない。2020年、東京オリンピック・パラリンピックがターゲットである。キーワードは“ICTオリンピック”だ。


出典 一般社団法人電波産業会[ARIB]


出典 情報通信技術分科会

■ 1G アナログ式携帯電話
 第1世代移動通信システムは、1979年初めて実用化されたアナログ方式の自動車電話に採用されている通信システム。これによって自動車電話や携帯電話が急速に普及した。
*周波数割当  800MHz帯

■ 2G デジタル化 電子メール/インターネット
 第2世代移動通信システムは、1993年に登場したデジタル方式の移動通信システム。デジタル化された携帯電話では、音声通話だけでなく、電子メール、インターネットが利用可能になった。
 NTTドコモでは、「mova」(ムーバ)と名付けてサービスを提供。
*周波数割当  1.5GHz帯 (下り最大数kbps)

■ 3G 画像/音声/ゲーム
 第3世代移動通信システムは、国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-2000」 (International Mobile Telecommunication 2000) 規格に準拠した通信システム。
 第2世代 (2G) では互換性のない方式の移動通信システムが各国、各地域別に展開されていたため、第3世代では世界的にローミングが可能となるように統一規格の策定を目指した。
 IMT-2000規格として1999年に勧告された地上系無線方式には5種類の規格が規定され、通信速度として144kbps(高速移動時)、384kbps(低速移動時)、2Mbps(静止時)が定められた。
 動画の送受信が可能になり、各種のサービスが提供され、携帯端末でもマルチメディア時代の幕開けとなった。

 Appleは3G対応モデルの「iPhone 3G」を発売、ソフトバンクが日本で発売を開始し、「iPhone」ブームの起爆剤になる。
 「iPhone 4S」からは、auも日本国内で発売開始。
 3G対応モデルのGoogle NexusSが発売し、Amazonは3G対応モデル、「Kindle Touch」を発売開始、Androidを搭載したスマートフォン端末やタブレット用が次々と登場する
 NTTドコモでは、「Foma」(フォーマ)と名付けてサービスを提供。
* 周波数割当  1.7GHz帯 1.8GHz帯 1.9GHz帯 2.1GHz帯 2.5GHz帯(BWA) (下り最大384kbps)


■ 3.9G LTE(Long Term Evolution) 高速化 100Mbps時代
 第3世代(3G)の移動通信システムをさらに高速化した規格。第4世代(4G)への橋渡しという意味で「3.9G」(第3.9世代)と呼ばれている。一般的には、LTEも「4G」という表現を使っている場合が多い。
 LTEで、通信速度が下りで最高100Mbps以上、上りで最高50Mbps以上となり、家庭向けのブロードバンド回線にほぼ匹敵する高速なデータ通信が可能となった。
従来と異なりすべての通信をパケット通信として処理するため、音声通話もデジタルデータに変換されてパケット通信に統合される。
 LTEで利用する周波数帯域や使用する帯域幅は3Gと共通にして、従来の通信サービスからのスムースな移行を目指した。
 AppleはLTE対応モデルの「iPhone 5」を発売、iPhone人気はさらに過熱した。
 「iPhone 5S」からはNTTも日本国内で発売開始。
 LTE対応のGoogle 「Nexus5」が発売開始。「Nexus 7」は2万円を切る価格で発売されスマートフォン端末の普及はさらに加速。
* 周波数割当  900MHz帯 900MHz帯 (下り最大100Mbps)

■ 4G(IMT-Advanced) 動画 1GBps時代
  第4世代移動通信システム(4G)は、国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-Advanced」 (International Mobile Telecommunication 2000) 規格に準拠した通信システム。「LTE-Advanced」と「WiMAX 2」の2方式がある。。
 100Mbp、200Mbps、1Gといった光ファイバーに対抗する通信速度を目指して技術開発が行われた。
 LTE-AdvancedはLTEを高度化したもので、WiMAX2(IEEE 802.16m)は、WiMAXをさらに進化させたもので、最高通信速度は1Gbps程度にまでに達する。4K映像や映画、ゲームなどの高繊細映像の携帯端末への配信が可能になった。
 通信速度は超高速化されるが、第3世代移動通信システム(3G)で使用している 2GHz帯 より高い周波数帯を用いるため、サービスエリアが狭くなることや屋内への電波が届きにくくなることから、3Gと併用してサービスしている。
 4GはiPhoneの登場と爆発的な普及を支えている移動通信システムである。

* 周波数割当  3.5GHz帯 (下り最大1Gbps)



出典 NTTドコモのホームページ


出典 2020電波政策懇談会

■ 5G
  総務省では、2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界に先駆けて、10Gbps 以上の通信速度という第5世代移動通信システム (5G)の実現をめざし、ロードマップの大枠を示し、産学官が連携して“オールジャパン”での取組みを強力に推進している。
 5Gは通信速度で現行の100倍に当たる10Gbpsの通信速度の実現を目指しており、スマートフォンなどの移動端末に、高精細な映像や大容量の情報を超高速で伝送できるようになる。 更に重要なポイントは、ICT社会の進展であらゆるモノがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)が急速に普及し、通信量の爆発的増加に対応しなければならない。また自動車や鉄道、ロボット、工場の生産設備、社会の隅々に設置されるセンサーなどの通信を瞬時に遅延なく処理する必要がある。
 5Gの開発とサービスの実現は、スマートフォンの延長線上にある移動端末だけの通信基盤はなく、Internet of Things(IoT)などICT社会の進展を支える情報通信基盤として必須になってきた。
 総務省では、2017年度から5Gの各種の技術を統合した実証実験を開始し、 ネットワークシステムやサービスモデルのイメージを作り上げながら実用化を推進しながら、5Gサービスを実現するために最重要の周波数帯の確保を行っていくとしている。商用化開始のターゲットは勿論2020年東京オリンピック・パラリンピックである。
 2017年9月、5G開発の推進組織、「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF)が発足した。発会式には、総務省やNTTドコモやKDDI、シャープ、ソニーなどの民間企業各社、研究所、大学関係者などが参列し、このプロジェクトへの意気込みを国内外に示した。


出典 電波政策ビジョン懇談会 総務省

焦点 5Gの国際標準化の主導権争い ハードルの高い要求水準

5GMFを立ち上げた日本
 日本では、2014年9月30日、総務省は「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF The Fifth Generation Mobile Communications Promotion Forum)を設立し、産官学のオールジャパン体制で5Gの技術開発や標準化に取り組んでいる。通信関連の企業74社や専門家14人で構成されている。
 これまでにまとめられている5Gのコンセプトは、MEITISの要求水準とほぼ同様の内容である。

▼ 通話エリアあたりで現状の1000倍のトラフィックを処理する大容量化
 (システム容量=ユーザー数×通信速度)
▼ 現状の10倍程度、ピーク時で10Gbps程度の高速通信
 (ピーク速度を10倍)
  *「上り」は10Gbps、「下り」は20Gbpsを目標(ITU会合合意)
▼ 感触通信やAR(拡張現実)、M2Mといった、タイムラグが大きな影響を与える技術に対応する1ms以下の低遅延
 (遅延10分の1)
▼ リニアや新幹線など交通機関で高速で移動中の通信を可能にする
 (移動性 500km/h)
▼ 大規模イベントや災害発生直後といった大量の通信トラフィックが集中する事態に対応しうる多数の端末との同時接続
 (接続機器数100倍)
▼ 電池切れを気にせずインフラ管理などに設置・利用可能は省電力化
 (消費電力2~3分の1)
▼ 情報通信基盤として幅広く普及しやすい価格水準
 (低価格化)

 こうした要求水準をどのように実現するかは、標準化作業が終わっていないので定まっていない部分が多いが、当面の間、「使いやすい帯域」の6GHz以下の低SHF(マイクロ波)帯を使ってLTE/LTE-Advancedと互換性を持ちながら5Gサービスを開始していきながら、6GHz超の帯域も使って5Gサービスを本格化させる戦略である。
 あわせてMEITISと同様に2020年に商業化を開始するというロードマップも公表し、技術的な開発や制度の整備を行うとしている。




出典 総務省


世界各国の5Gの技術開発・標準化の推進体制は?


出典 情報通信技術分科会

標準化で主導権を握る3GPP(3rd Generation Partnership Project)
 3GPPとは、第3世代(3G)移動体通信システムの標準化プロジェクト。また、同プロジェクトによる移動通信システムの標準規格。
 1998年12月、アメリカのT1(現ATIS)、ヨーロッパのETSI、日本の電波産業会(ARIB)や情報通信技術委員会(TTC)、韓国のTTAといった通信標準化団体が基になって結成され、後に中国のCWTS(現CCSA)も加わっている。
 3GPPは、NTTドコモやEricssonが推進していた日欧方式のW-CDMAを標準規格としていたが、1999年のQUALCOMM社とEricsson社の合意を受けて、QUALCOMM社のcdma2000方式も取り込んだ標準規格を最終的に採用した。
 ITU(国際通信連合)は、3GPPの標準規格を参照して、第三世代移動通信(3G)の国際標準「IMT-2000」を策定した。
 3GPPでは、2016年3月をめどに「リリース13」を確定し、LTEの高度化に向けて、無線LANとLTEを1つのネットワークとすることでアクセス機能を強化したりして、遅延時間の低減、消費電力のさらなる削減を図り、水平方向に加えて垂直方向までカバー領域を広げるマルチアンテナ技術などの技術規格を定めるとしている。また「リリース13」では5Gにつなげる重要な基本コンセプトが定められる。
 引き続き「リリース14」の策定を開始し、5Gの技術要件のアウトラインを固め、2018年末までには詳細な技術要件を定めた「リリース/15」で、5Gの標準化をする予定である。また「リリース/15」では、6GHz未満の周波数帯域を利用した標準規格、「フェーズ1」と6GHz以上の高い周波数向けの「フェーズ2」(2019年に決定)に分けるとしている。


出典 2020電波政策懇談会



5Gの最大の難関は周波数帯と帯域確保

■ 第三世代3G・LTEサービスの周波数帯
 従来の、3GやLTEのネットワークでは700~3GHz帯(UHF帯)の周波数帯が主に使われていた。
 これらの周波数帯のうち、低周波の700~900MHz帯は、電波の到達距離が長く、建物などの構造物を回りこみやすい上に、コンクリートなどを通りに抜ける特性があり、携帯電話などの移動通信には最適とされ、「プラチナバンド」と呼ばれて移動通信事業者間で争奪戦が繰り広げられてきた。
 テレビ地上波のアナログ放送終了に伴い、「プラチナバンド」の700MHz帯と900MHz帯は再編成されて携帯電話事業者に割り当てられた。700MHz帯は、NTTドコモとKDDI(au)、それにイー・アクセスに割り当てられ、900MHz帯はソフトバンクに割り当てられた。これまでソフトバンクは、1.5GHz帯や一部2GHz帯の高い周波数を使用していため、ライバルのNTTドコモやKDDI(au)に比較してつながりにくいという批判が多かった。周波数が高くなると電波の性質が光に似てくるのでコンクリートなどは通りにくくなるので建物の中や、基地局と見通しがきかない建物の影などは電波状態が悪くなるからである。ソフトバンクはこの調整で「プラチナバンド」を初めて手中にして、他社との競争で優位に立ったとされている。
 携帯電話の割り当て周波数帯としては、「プラチナバンド」の700~900MHz帯の他に、1.5GHzや1.7GHzの帯域も使用されている。
 いずれにしても700MHz~3Gの極超短波(SHF)帯は満杯、LTE-Advancedや5Gサービスを開始する余地はない。

■ 第四世代4G・LTE-Advanced サービスの周波数帯
 2014年12月、総務省は第4世代移動通信(4G)サービス向けの周波数をNTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクモバイルの3社に割り当てると発表した。4Gサービスでは、現行の約10倍の高速通信が可能で、3社は相次いでサービスを開始した。
 今回、新たに3社に割当られた周波数帯は、3.5GHz帯(3480〜3600MHz)の合計120MHz帯域幅で、本格的な4Gサービス、LTE-Advancedの使用され、最大1Gbps、高速走行時には100Mbpsの高速移動通信サービスを実現する。
 一般にLTEサービスは、4Gと呼ばれているが、正確には3.9Gとされている。LTE-Advancedで初めて第4世代移動通信(4G)になる。
 3.5GHz帯はこれまでより高い周波数帯になるため、ひとつの基地局で広範囲なサービスエリアを作りにくいとう欠点がある。電波の直進性が強く、ビル影や山間部などでの電波到達環境は、「プラチナバンド」に比較するとかなり劣る。一方、高い周波数帯域では、より高速の通信が可能にあることやアンテナを小さくできるので、携帯端末での利用でも都合が良いというメリットもある。また、周波数が高い帯域の電波は、まだ利用が進んでいなく広い帯域を確保しやすい。
 LTE-Advancedでは大容量のデータを高速で送受信可能にするために、複数の異なる周波数帯の電波を束ねて、1つの通信回線として送受信を行うキャリアアグリゲーションや多数のユーザーの通信を束ねて処理をするOFDM、複数のアンテナを搭載するMIMO、「下り」変調方式に256QAMを採用するなど新たな通信技術を取り入れている。携帯各社ではLTE-Advancedサービスをユーザーが集中する都市部を中心にエリアを拡張していくとしている。
 さらに情報通信審議会の答申では、LTE-Advanced用として、3.4GHzから4.2GHzまでの帯域を、将来割り当てる可能性を示唆している。現在の国際標準では、3.6-3.8GHzを移動体通信の帯域として規定しており、4.2GHzまでの規定はまだないが、今後、国際標準の動向をみて拡張すると見られている。
 2015年3月から、NTTドコモは、下り最大225Mbpsの通信速度を実現したLTE-Advancedサービスを開始した。第4世代(4G)時代が始まった。



■ 5Gの登場でさらに不足する移動通信帯域
 iPoneや携帯電話、タブレットなどの移動体端末や、Internet of Things(IoT)が急速に普及し、爆発的に増加している通信量に答えるために移動体通信に割り当てる周波数帯域の確保が急務になっている。とりわけ高速な伝送を要求される4Gや5Gは、大量の帯域が必要となる。
 現在確保されている移動体通信の周波数帯は、6GHz以下の帯域で、第3世代(3G)で490MHz幅、BWAで90MHz幅、PHSで30MHz幅、無線LANで350MHz幅、あわせて約910MHz幅である。
 この帯域を2020年には、3Gで10MHz幅増、3.9Gで200MHz幅増、4Gで600MHz幅増、そして5Gの登場で500MHz幅増、さらに携帯電話と無線LAN等で350MHz幅を追加して、約1740MHz幅を増やし、約2700MHz幅を確保するとしている。
 さらに、5G用の帯域として、6GHz以上に約23GHz幅程度の帯域を確保する方向で研究開発を進めることを明らかにした。
 第五世代移動通信システム(5G)の帯域はどのように確保するのか、5G用の周波数に関する国際標準がどう決まるのかを見分けながら難しい舵取りが必要とされるだろう。




出典 情報通信技術分科会

5G開発に凌ぎを削る移動通信各社
 米欧、中国、韓国、世界各国の5G開発競争は熾烈である。
 2016年9月、米国の最大の携帯電話会社、Verizonは、5Gの商用サービスを世界に先駆けて2017年9月までに開始すると発表した。すでにVerison Technology Forumを立ち上げ、Ericsson、Nokia、Cisco、Qualcomm、Samsungなどのパートナー企業と共に開発を進めているとしている。(CNET 2016年9月8日)
 一方、2016年1月22日、Ericsson(スエーデン)は5Gの商用サービスを2018年から開始すると発表した。
 同社によると、このサービスは、スウェーデンやエストニアをはじめユーラシア大陸各地に拠点を置くTeliaSoneraの協力を得て、スウェーデンのストックホルムとエストニアのタリンで開始する。
 その際には、通信サービスのみならず、IoT(モノのインターネット)向けのサービスも提供予定とのこと。同社は、その適用分野として、医療や車載分野を示唆している。
 EricssonとTeliaSoneraは、2009年に「世界初」として4G/LTEネットワークの商業運用をスウェーデンで開始している。今回も、このサービスを世界最先端と位置づけ、まずはストックホルムとタリンでの使用状況を見て、今後のビジネスに生かしたいとしている。Ericssonの最新レポートでは、2021年末までに5G関連の契約件数は1億5000万件に至ると試算している。(日経テクノロジー 2016年1月27日)

 日本での5G開発の主導権を握っているには、ドコモだ。
 2015年3月、ドコモはEricssonと共同で4.5Gbps以上の「5G」通信実験を行い、成功した発表した。
 実験は、ドコモR&Dセンタ(神奈川県横須賀市)で行われ、15GHzの高周波数帯域(400MHz帯域幅)と4×4 MIMOの通信多重化技術を使用して使われた。実験では端末に見立てた移動局を時速約10キロメートルで走行させて下り最大4.58Gbpsを計測した。
 6GHz以上の高周波数帯は電波が遠くまで届きにくく、移動体通信での利用は難しいとされる。さらに高い周波帯であるミリ波を使用した実験をNokia Networksと共同で実施、70GHz帯を使用して六本木ヒルズの建物中で2Gbps以上のデータ通信に成功している。
 サムスン電子との共同実験では、韓国・水原市にあるサムスンデジタルシティ周辺の道路で、自動車を時速60kmで走行させてデータ伝送の実験を行った。 使用周波数は、28GHz帯(800MHz幅)で、96素子のアンテナを用いたビームフォーミング機能とビーム追従機能を駆使し、移動する自動車の中でも受信で2.5Gbpsを超えるデータ伝送に成功している。
 富士通との共同実験では、小型基地局(分散アンテナユニット)の協調伝送技術により、単位面積あたりのシステム容量を増大させる検証が行われた。使用した周波数は、4.65GHz帯、超高密度分散アンテナと協調技術で4端末合計が11Gbpsの伝送速度を実現した。
 ドコモは、この他に、Alcatel Lucent、日本電気(NEC)とも5Gに関する実験協力を進めることで合意している。また30GHz~300GHzのミリ波帯の通信性能改善や6GHz未満の周波数帯の活用についての検証するため、三菱電機やファーウェイとの協力についても合意している。
 2020年7月の東京オリンピック開催までに、商用サービス開始を目指すとしている。


出典 5Gの開発協力企業 Docomo

2020年サービス開始は間に合うのか?
 総務省では、2020年東京オリンピック・パラリンピックに商用化を開始したいとしているが、超高速、大容量、低遅延、多数の端末接続、省エネ、低コスト、5Gサービスの要求水準は極めて高い。
 5Gの開発を推進する各社の見解が共通するのは5Gを既存のLTEと一体化させるという戦略である。LTEやLTE-Advancedの延長線上で活用できる技術を使い5Gサービスを実現していくコンセプトだ。その標準化は、3GPPが5G NR標準仕様として明らかにしている。(上記 「5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP」参照)
 しかし肝心の使用周波数帯は、どの周波数に帯域幅をどの程度確保するのかが未だに正式に決まっていない。
 総務省では、2020年5G実現に向けて、6GHz以下では3.7GHz帯や4.5GHz帯で最大500MHz、6GHz以上の帯域では28GHz帯で最大2GHzの確保を目指すとしている。
 しかし、6GHz以下の帯域は満杯で、5G用の帯域幅が十分に確保できず、1事業者当たりの割り当て帯域幅は極めて限定され、5Gの要求水運の通信速度が達成できないだろう。
 これに対し、6GHz以上の28GHz帯は、通信速度が十分に達成できるが、電波の到達距離が短く、回り込みがほとんどないので遮蔽物に対して弱いという弱点がある。これまで移動通信では利用実績がなく、新たな無線通信技術、RAT(Radio Access Technology)を導入が必須となる。
 5Gサービスを実現するためには、基地局を中心にマクロセルとスモールセルとを重ね合わせてネット構成や、複数の周波数を束ねて送信するキャリアグリゲーション、ユーザーデータと制御情報を分けるU/C分離システム、超高速、低遅延、同時多数接続など多様な要件を持つトラフックを切り分け処理するネットワークスライシング技術、256素子のアンテナ素子を備えるMassive MIMO、電波を特定の方向に集中して端末の動きに追従させるビームフォーミングの開発など、移動通信事業者には難題が山積している。

ユーザーは5Gに飛びつくのか?
 消費者(ユーザー)にとって、5Gは魅力的なサービスになるのだろうか?
 3Gの登場で動画サービスが可能になり、スマートフォンの爆発的な普及を支えた。電話とメール機能中心の2Gから機能が飛躍的に進化したと言えるだろう。
 4Gになって、さらに大容量のデータの高速通信が可能になり、HDなどの高画質の動画やゲームなどが楽しめるようになった。
 5Gになると更に高画質の4K 映像などもライブで快適に視聴可能としているが、携帯端末の小さなスクリーンではそこまで高画質にしても優位差はあまり感じられず、消費者(ユーザー)は。魅力的な新しいサービスとして飛びつくのだろうか。Youtubeやインターネット、SNSを利用するにはLTEでも十分である。
 4K、VR/ARコンテンツを5Gでアクセスすると短時間でも通信量が膨大になり、通信料の負担が増す。それに見合った納得するサービスを受けられないとすれば、消費者(ユーザー)は見向きもしないだろう。
 10Gbps、遅延1msというハイスペックな5Gの性能を活かした新たなサービスとして何が考えられるのだろうか。5Gはオーバースペックで、消費者(ユーザー)にとっては4Gで充分なのではないだろうか。
 5Gの商用サービスが開始されても普及が進まなければ、通信事業者はビジネスモデルが築けなくなるという深刻な問題が生まれる。

 ICT社会の進展であらゆるモノがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)が急速に普及し、通信量が爆発的に増加する。自動車や鉄道、ロボット、工場の生産設備、社会の隅々に設置されるセンサーなどの通信を瞬時に遅延なく処理しなければならない。遅延1msというリアルタイムでの5Gの通信環境はInternet of Things(IoT)には重要である。
 しかし、Internet of Things(IoT)の普及拡大には、設置されるデバイスが膨大な個数になるため通信料の負担をどの程度の水準になるかがポイントである。一方でそもそもInternet of Things(IoT)にとって5Gまでのスペックが本当に必要なのか、それとも大半は4Gの拡張で対応可能なのか、冷静に検証する必要があるだろう。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと2年余り、5Gのユニバーサル・サービスは実現できるのだろうか?







2016年1月27日 初稿
2019年4月11日 改訂

Copyright (C) 2019 IMSSR




**************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
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